不動産鑑定士の試験・資格を徹底解説!概要や取得ルート、取得までにするべきこと

不動産鑑定士は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に定められた資格であり、不動産の価格や賃料を鑑定評価することができる唯一の資格です。

不動産の鑑定評価を行うためには不動産の価格等が形成されるメカニズムについての深い理解が必要であり、不動産鑑定士の資格取得までの道のりも長く険しいものになっています。

今回は、不動産鑑定士の資格を取得するまでのルート、資格取得までに身に付けておきたいことなどについて解説をしていきます。

不動産鑑定士ってどんな仕事?

不動産鑑定士の主たる仕事は、不動産鑑定評価書を作成することです。

このほか不動産の価格や賃料に関する専門家として、依頼者からの要請に応じて不動産の取引水準や地代、家賃などの水準の調査や、蓄積された知見、情報を活かして不動産の有効活用、開発計画における助言などのコンサルティング業務も行うことがあります。

また、融資に際しての担保不動産の価値を把握するため金融機関などからのニーズや不動産取得、運用の際の価値把握、有効活用を検討するため不動産会社などからのニーズによって、鑑定業者以外の会社で活躍する企業内鑑定士も増えています。

不動産鑑定士の資格とは?

不動産は個別性が強く、一般の商品や有価証券のような合理的な取引市場が形成されにくいことから適正な価格を求めることが難しいという特性を有しています。

国家資格としての不動産鑑定士の役割は、鑑定評価の活動によって不動産の適正な価格の形成に貢献するというものです。

不動産の鑑定評価によって不動産の適正な価格を求めるためには、合理的な市場に成り代わって不動産の適正な価格を判定するという作業が必要になります。

合理的な市場に成り代わるためには不動産の価格等が形成されるメカニズムの理解、高度な知識、技術を必要とします。

このような理解、知識、技術を習得するためには鑑定評価理論を始め、民法、経済学、会計学などの知識を備えることが必須であり、不動産鑑定士の資格はそれを備えていることを証明する国家資格だといえます。

不動産鑑定士の受験資格について

不動産鑑定士の受験資格は試験制度の改革によって撤廃され、2006年から年齢、学歴、国籍、実務経験等に関係なく受験することが可能になりました。

不動産鑑定士の資格取得ルートについて

不動産鑑定士の資格取得までのルートは、一般的に、「短答式試験」と、その後に短答式試験合格者を対象に実施される「論文式試験」に合格し、「実務修習」の課程において「終了考査」に合格することで不動産鑑定士となる資格を有することになります。

正式に不動産鑑定士を名乗るためには、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿への登録を受けなければなりません。

上記の不動産鑑定士の資格取得のルートのそれぞれの段階について下記に解説していきます。

なお、試験制度は見直しされることがありますので、ご留意ください。

試験の詳細などは必ず国土交通省、不動産鑑定士連合会のホームページなどでの確認をお願いします。

短答式試験

不動産鑑定士の資格取得は短答式試験から始まります。

例年2月中旬から3月上旬にかけて受験願書の受付、5月中旬に全国10都市で試験が行われ、6月下旬に合格発表となります。

試験科目は、「不動産に関する行政法規」、「不動産鑑定評価に関する理論」の2科目で、短答式試験、いわゆる択一式(マークシート方式)で行われる試験です。

不動産に関する行政法規の試験では、土地基本法、不動産の鑑定評価に関する法律、都市計画法などを中心に、都市緑地法、相続税方、宅地建物取引業法など不動産に関する多くの法律を含み、40問が出題されます。

不動産鑑定評価に関する理論の試験では、不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項から、行政法規の試験同様に40問が出題されます。

合格の基準は総合得点が7割程度で、土地鑑定委員会が相当と認めた得点が必要となり、この他各科目について一定の得点が必要となります。

近年、受験者数は1,500人から2,000人で合格率は30%強という状況となっています。

論文式試験

短答式試験に合格すると論文式試験の受験資格を得ることになるのですが、必ずしも受験年度の短答式試験に合格している必要はありません。

前年度及び前々年度の短答式試験の合格者は、短答式試験の免除申請を行うことによって、当該年度の短答式試験の受験が免除されます。

論文式試験は、例年8月の上旬に東京、大阪、福岡の3都市で3日間かけて試験が行われ、10月下旬に合格発表となります。

ちなみに、令和2年はオリンピック開催の関係で8月中旬に行われる予定となっています。

試験は1日目の午前「民法」、午後「経済学」、2日目の午前「会計学」、午後「不動産の鑑定評価に関する理論」、3日の午前「不動産の鑑定評価に関する理論」、午後「不動産の鑑定評価に関する理論(演習)」となっており、それぞれ試験時間は2時間です。

民法は、民法の第1編(総則)、第2編(物権)、第3編(債権)の財産法を中心に、同法の第4編(親族)及び第5編(相続)並びに特別法のうち借地借家法、建物の区分所有等に関する法律を含んだ範囲からの出題となります。

経済学はミクロ及びマクロの経済理論と経済政策論から、会計学は財務会計論(企業の財務諸表の作成及び理解に必要な会計理論、関係法令及び会計諸規則を含む。)から出題されます。

不動産の鑑定評価に関する理論は、不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの出題となり、範囲は短答式と同じです。

広範囲に渡る分野での試験となりますが、不動産鑑定士という実務家のための試験ですから、不動産の価格、需給に関する分野の出題が中心となる傾向にあります。

論文式試験では一定の条件を満たしていると試験科目の免除を申請することができます。

大学等において通算して3年以上法律学、経済学、商学に属する科目の教授又は准教授の職にあった者は、法律学は民法、経済学は経済学、商学は会計学の論文式試験の免除申請を行うことができます。

法律学、経済学又は商学に属する科目に関する研究により学位を授与された者も同様にそれぞれに該当する科目の論文式試験の免除申請を行うことができます。

このほか司法試験又は旧司法試験第二次試験に合格した者は民法、公認会計士試験に合格した者又は旧公認会計士試験第二次試験を合格した者は経済学の論文式試験の免除申請をすることができます。

上記以外にも科目の一部免除に該当するケースもありますが、試験免除に該当するかどうか、申請に必要な書類などについては必ず自分自身で確認を行ってください。

なお、免除の申請可能な科目が複数ある場合には、その全部を免除とするか又は一部を免除とするかの選択は任意となっています。

合格の基準は総合得点が6割程度で、土地鑑定委員会が相当と認めた得点が必要となり、この他各科目について一定の得点が必要です。

一部科目免除がある受験者については、免除科目を除いた科目の合計点を基に偏差値等を用いて総合得点に相当する点数を算出して、当該点数に基づき合否の判定を行うことになります。

近年、受験者数は700人から800人で合格率は15%程度という状況となっています。

不動産鑑定士の試験については、制度が変わることもあるので、不動産鑑定士を目指す方は、最新の試験情報についての情報収集を怠らないようにしましょう。

実務修習

論文式試験に合格をしただけでは不動産鑑定士の資格を得ることはできず、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会(以下、連合会とする。)が実施する実務修習を受講し、終了考査に合格する必要があります。

この実務修習が不動産鑑定士となるためのルートで大きなポイントとなります。

令和元年度の実務修習実施計画に基づき、実務修習の内容を解説します。

実務修習は、①講義受講、②基本演習、③実地演習の修習課程を経て、最後に修了考査を受けるという流れになります。

上記①~③の修習課程では、単元ごとに修得確認の審査が行われ、修得の確認ができなかった者は当該単元について再履修を行うことになります。

実務修習期間内に全ての修習課程の修得が確認されると、終了考査を受ける資格が得られます。

実務修習では多くの講義受講と課題を修める必要があることから、実務修習期間も1年コースと2年コースの2種類のカリキュラムが用意されています。

2種類のコースとも修習内容は同じであるため、実務修習生は自身の環境などを十分に考慮して、コースを選択することになります。

①の講義受講は、インターネットを利用したeラーニングという方式で16講座を受講しなければならず、それぞれの講義終了後には確認テストが実施されます。

②の基本演習は、第一段階から第四段階まで実施され、それぞれの段階で課題となる類型に応じて鑑定評価手法の適用、鑑定評価額の決定を行い、作成した鑑定評価書を演習最終日から起算して10日以内に提出することになっています。

この演習は東京に修習生を集めて集合研修の形式で2~3日間かけて行われ、4名ごとのグループで評価の方針や作成方法などについての討論を行います。

作業ボリュームが大きく、大変な演習ですが、不動産鑑定士を目指す修習生が集まる機会ですから、是非、親睦を深める機会にしていただければと思います。

③の実地演習は、連合会が設定したカリキュラムに従って、履修期限までに物件調査実地演習で2件の報告書、一般実地演習で13件の鑑定評価報告書の作成を行い、提出することになります。

なお、実務経験を有している場合には、その内容によっては、みなし履修という制度により、物件調査実地演習、一般実地演習の一部を履修したものとすることができますので該当する方は確認をしておきましょう。

この実地演習は連合会が認定した実地演習実施機関の実地演習実施場所において連合会が認定した指導鑑定士により実施しなければならないと定められています。

このため実務修習生は、実地演習のために実地演習実施機関で指導鑑定士の指導を受けられる環境を整えなければならず、この環境が実務修習生の終了考査の合否、その後の不動産鑑定士としての実力にも大きな影響を与えるといっても過言ではありません。

実地演習を修得するために、連合会が認定している指導鑑定士が在籍している実地演習実地機関でもある鑑定業者に就職して、職員として業務に従事しながら実地演習の指導を受けるというのが一般的な方法です。

実地演習実施機関、指導鑑定士の確認、鑑定業者による求人情報などは連合会のホームページで確認できます。

この方法の場合には、実地演習の費用を鑑定業者が負担してくれるケースが多く、実務修習生にメリットがありますが、一方で繁忙状況などによっては、指導状況に不安を抱える可能性があることも否定できませんので実地演習実施機関の選択は慎重に行うようにしましょう。

また、不動産鑑定士になった後も何年かは同じ業者で勤務することが費用負担の条件となっているケースもありますので、確認をしておくことが大切です。

一方で、実務修習のための転職はできないという実務修習生もいることと思います。

勤め先が不動産鑑定士を必要としている職場であれば、実地演習実施機関となっている鑑定業者へ出向させてくれるケースもありますが、それが難しいようであれば実地演習に要する費用を負担して指導を受けるという方法を選択することとなります。

このような形で実務修習生を受け入れている機関であれば、夜間や土日などを利用するなどして実務修習生の都合に合わせた指導を行ってくれますので、退職することなく実務修習を受けることが可能です。

また、鑑定業者ではなく、明海大学の不動産研究センターでも実務修習生の受け入れを行っており、本業の勤務を続けながら実務修習を受講している方がいらっしゃるようです。

いずれにしても費用を負担して指導を受ける場合には、100万円前後を用意する必要がありますので、金銭的な負担は相当なものになることは覚悟しておく必要があります。

実務修習の申し込みは9月下旬から11月の上旬までとなりますので、10月下旬に論文式試験の合格発表が行われることを考えると、実地演習実施機関の選定は早めに行うことが必要です。

以上、講義、基本演習、実地演習について無事に修得の確認を受けることができて初めて修了考査を受けることが可能となります。

修了考査は、多肢択一式及び論文式による記述の考査と口述による考査があり、修得の確認が完了した後の1月中に記述の考査が行われ、1月後半に連合会の指定日に口述による考査が行われます。

考査は鑑定評価に関する事項に限られ、記述の考査は東京に集められて行われ、口述では実地演習の内容について受験者一人に対して、修了考査委員3名によって行われ、時間は20~30分が目安となります。

修習生が実地演習で作成した鑑定評価書の内容についての質疑が口述試験の中心となりますので、実地演習ではどの評価書の作成に当たっても気を抜いてはいけません。

この修了考査の結果は3月に発表されますが、合格率は80~90%という厳しいものとなっており受験者全員が合格するという訳ではありません。

最後まで準備を怠ることなく整えておく必要があります。

無事に合格すると国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に不動産鑑定士として登録することが可能となり、当該登録をもって不動産鑑定士を名乗ることができるようになります。

不動産鑑定士の資格を取得するまでにするべきこととは?

不動産鑑定士の資格を取得するまでは、試験に合格した後も上記で解説したように実務修習で短くても1年間は要するため、試験勉強を含めると早い人でも2年近くはかかります。

その間にするべきこととして考えられるものを以下に挙げていきます。

パソコンのスキルアップ

パソコンのスキルは不動産鑑定士にも必須なものとなっています。

プログラムを作成してソフトを作成するというレベルまで求められる訳ではありませんが、ワード、エクセルなどを使って文書やグラフの作成を行い、鑑定評価書や調査報告書などを作成することができなければなりません。

また、鑑定評価書等の作成の過程において、様々なデータの選別、分析に際してもエクセル等のスキルが求められます。

他人の作成したエクセルファイル等の計算式が正しいかどうかを確認するためにも一定のスキルは必要です。

パソコンのスキルアップのために学校に行く、独学するなど方法は色々とありますが、基本的なワード文書の作成、エクセルの関数はマスターしておく必要があるといえるでしょう。

ビジネスマナー

不動産鑑定士の資格を取得し、対外的に不動産鑑定士として仕事を行うようになると依頼や取材などで多くの方と会うようになります。

前職を有しており、そこの企業などでビジネスマナーを学ぶ機会があった人であれば良いのですが、なかには社会人経験が無いままに不動産鑑定士となる方もいます。

実務修習機関などでビジネスマナーを教えてくれることもまれにありますが、実際はそこまでのことを期待するのは難しいというのが実情です。

不動産鑑定士も、他の会社の方と会ったり、電話やメール等でやりとりをしたりする際のビジネスマナーを身に付けておくことは必須だといえます。

教えてくれなかったということは言い訳にはなりません。

社会人として恥ずかしくないような振る舞いができるように書籍や講座などでビジネスマナーを身に付けておくようにしましょう。

相談できる不動産鑑定士の知り合いを増やす

不動産の鑑定評価では多種多様な不動産を評価の対象とします。

不動産鑑定士の資格を取得した途端に、ありとあらゆる不動産の評価を適切に行えるようになるという訳ではありません。

不動産鑑定士として仕事を進めていく際に問題にぶつかったり、悩んだりする場面は多くあります。

このようなときに文献や先例などによって問題解決の糸口を探すのも専門家として当然なのですが、このほかに信頼できる不動産鑑定士に相談したり、アドバイスを貰ったりするというのも大変有用な方法です。

このためには相談できる不動産鑑定士の知り合いを増やしておく必要があります。

不動産鑑定士になるまでには上記で解説したように長い時間と、勉強を要します。

その過程において多くの不動産鑑定士や不動産鑑定士を目指す人たちと触れ合う機会がありますので、交流を深めて相談できる不動産鑑定士の知り合いを増やしておきましょう。

用語の習得

どの業界でもそうですが、一般的には知られていませんが、その業界では当然のように使われる用語があります。

例えばマイソク、アド、LCC、キャペックス、リースアップ、ダウンタイムなど、不動産の鑑定評価でもそのような用語に触れる機会が多くあります。

基本的には業務経験を積みながら用語の使い方や意味を理解していけば良いのですが、事前に用語を知っておくことで、業者取材による話の内容の理解が深まるなどして、仕事が円滑に進むことは間違いありません。

仕事の合間の小休憩などに、インターネットなどで不動産用語集などを見るだけでも理解が深まりますのでお勧めです。

運転免許の取得

必須という訳ではありませんが、不動産鑑定士として勤務するエリアによっては普通自動車の運転免許を取得しているほうが望ましい場合があります。

不動産鑑定士の仕事では、鑑定評価や調査の対象となる不動産や取引対象となった不動産まで赴き、確認作業を行うことを欠かすことはできません。

運転免許は、東京都心部などのように公共交通機関が発達している場合には必ずしも必要という訳ではありませんが、地方などの場合には車でなければ行くことが難しい場所も多く、地方の鑑定士事務所では採用に際して運転免許の所持が必須ということもあります。

運転以外にも身分証明書としても大変重宝しますので、運転免許を所持していない場合には取得を検討してみると良いかもしれません。

不動産鑑定士セミナーを探すにはこちらから >

最後に(まとめ)

不動産鑑定士の資格を取得するまでのルートを中心に解説しました。

試験についての細かな確認は必ず国土交通省、連合会などのホームページなどで行ってください。

不動産は生活や経済活動の基盤であることから、その価格形成に深く関わる不動産鑑定士には大きな責任が求められますが、やりがいも十分に感じることのできる仕事です。

これから不動産鑑定士を目指す方の参考になりましたら幸いです。

最終更新日:2020年2月13日